修二会(しゅにえ)




正しくは
修二会(しゅにえ)(旧暦二月に行われる法会)といい、この行法は水の行というより、火の粉を浴びて厄を払う火の行と呼ぶのがふさわしいかもしれません。

奈良・東大寺の僧たちが自分の罪と汚れを懺悔(ざんげ)し、国の安泰と人々の幸せを十一面観音に祈る法要の1つで、関西では、この行事は「春を呼ぶ」季節の風物詩でもあります。

しかし、一般の人の目にはにぎやかなクライマックスとしてか映らない「おたいまつ」は、じつは複雑でミステリアスな一連の行事のごとく一部にすぎません。では、なぜ「お水取り」なのか?謎と神秘に満ちたこのお水取り」の森に分け入ってみることにしましょう。水と火は世界中のお祭り・儀礼の主役をつとめることが多い。東大寺・二月堂のお水取りは、その典型といえるでしょう。

3月12日の夜、回廊は火に包まれ大松明の炎から振り落とされる大小無数の火の粉を浴びようと、人々がどっと押し寄せる。「お水取り」「おたいまつ」と親しまれていますが、先に述べましたように正式には修二会といいます。二月に修する法会の意味で、二月堂の呼び名もここから来ています。「お水取りが終わらないと春が来ない」と関西の人々が言い慣わすこの行事は、謎と不思議な行法でいっぱい。

春の風物詩


よく知られるのは前途の「おたいまつ」のくだりですが、実は修二会そのものは、2月20日の「別火入り」から既に始まっていて、僧侶たちはこの日から、風呂、かまど、火鉢などの火を外部社会と別にします。さらに、仏前に供える椿・南天など造花作りのほか、準備期間が非常に長い。

一般の人々は「おたいまつ」だけで満足して帰ってしまうことが多いですが、実際にはそれ以外の興味深い行事がその後、行われます。

走る僧侶たち

深夜に行われる「お水取り」(水取り式)は「走り」と「
達蛇(たつた) 」というアクティブな行も見ごたえがあります。走りでは、天上と下界の時間差を短縮するために、僧侶が袈裟(けさ)・衣をたくしあげて、内陣をくるくる走り回る。達蛇は、袈裟・衣を紐で縛り、金襴の帽子をかぶり、燃え盛る松明で火の粉を振りまきながら、人々の煩悩を焼き尽くす行なのです。


「おたいまつ」は、やはりお水取りのクライマックスですが、じっくり腰を据えて僧侶たちと共に行をする気構えで、寒気のさなか最後まで参観するのもいいでしょう。

天平勝宝四年(752)、二月堂を創建した実忠和尚によって始められたといわれる。現在では3月1日から14日まで修二会が行われ、5日は、実忠忌、5日と7日は東大寺歴代の追福の行事、7日は小観音、12日はお水取りと籠松明、14日までは達蛇の妙法と続く。お水取りの呼称は二月堂境内の良弁杉の下にある井戸「若狭井」の香水をくみ上げて本堂に運ぶところからきています。


若狭のお水送り


この井戸の水は実は10日前の3月2日夜、はるか遠く離れた若狭の国(福井県)小浜の遠敷(おにゅう)川に流された聖水が地下水となって若狭井にわき出るものとされています。いわば気宇壮大な「通底器」を思わせる奇妙ないわれです。福井県小浜市の神宮寺の層たちはこの日、傍目に異様にも見える覆面装束姿で遠敷川に聖水を放つのですが、ここでも燃え上がるかがり火と水が敬けんな儀式を構成します。